花粉症のお薬をどう使い分ければよいか、症状別にご紹介していきます。
- 花粉症編ー①症状の解説
- 花粉症編ー②花粉症薬の概要
- 花粉症編ー③市販薬
- 花粉症編ー④病院でもらうお薬
病院でもらうお薬(抗ヒスタミン薬)
病院で処方されるお薬の中には、前回ご紹介した「ドラッグストアで購入できる市販薬」も含まれます。下図でいうとオレンジ色で示したお薬になります。よって、オレンジ色で示したフェキソフェナジン(アレグラ®)などのお薬が実際に病院で処方されることもあります。
オレンジ色のお薬(市販薬)は、前回詳しく説明しておりますので、そちらをご参照ください。
今回は、青色で示した、一般に市販されておらず「病院で診察を受けてのみ」服用することができる花粉症薬について、比較・ご説明していきます。
参考文献:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jibiinkoka/123/3/123_196/_pdf
- こちらの比較表は各薬剤のインタビューフォームを参考に作成しています。この比較は目安となりますので、実際の効果は個人差があります。
- 比較表はすべて成分名です。
- ( )内の数字は、一日に服用できる回数です。
- →例えば「ロラタジン(1)」は1日1回の服用で効果が発揮されるお薬となります。
- これからご紹介するお薬は、「商品名®(成分名=ジェネリック医薬品名)」の順番で表記しています。
アレロック®(オロパタジン)
1錠中に「オロパタジン2.5mgまたは5mg」が含まれます。抗ヒスタミン薬としての効果・眠気の副作用、ともに比較的強いお薬です。即効性があります。腎臓の機能が低下している方には、お薬の量を減らすことがあります。こちらは1日2回飲むお薬で、「朝食後」と「寝る前」のように処方されます。
【メリット】
・効果が比較的強い
・即効性がある
【デメリット】
・眠気が比較的強く出る可能性がある→運転不可
・腎臓が悪い方は服用を始める前に医師、薬剤師に相談した方がよい
ルパフィン®(ルパタジン)
1錠中に「ルパタジン10mg」が含まれます。鼻の血管拡張による「鼻づまり」に対しても効果が期待できるとされているお薬です。
このお薬の最大の特徴は、体内でルパフィン®(ルパタジン)が分解されて、デザレックス®(デスロラタジン)としての効果も発揮することが挙げられます。
ルパフィン®(ルパタジン)は即効性を示し、デザレックス®(デスロラタジン)は遅れて長期作用を示します。これにより、即効性を示し、かつ作用の持続性を持つお薬となっています。持続性があるため、1日1回の服用になります。
【メリット】
・即効性がある
・効果が長く持続するため1日1回の服用でOK
・症状に応じて1回1錠→1回2錠に増量できる
・鼻づまり(鼻閉)に効果があるとされている
【デメリット】
・眠気が比較的強く出る可能性がある→運転不可
・日本では後発品(ジェネリック医薬品)の発売がまだなので、お薬の値段が高くなる可能性がある
ザイザル®(レボセチリジン)
1錠中に「レボセチリジン5mg」を含有します。実はこのお薬は、市販薬のページでご紹介した「セチリジン」を改良したお薬になります(「セチリジン」に ”レボ” がついて「レボセチリジン」)。
【メリット】
・強い効果を発揮する
・即効性の面で優れている
・1日1回服用でよい
【デメリット】
・眠気が比較的強く出る可能性がある→運転不可
・腎臓が悪い方は服用を始める前に医師、薬剤師に相談した方がよい
※成分構造式は、各添付文書より抜粋
上の「セチリジン」と「レボセチリジン」の成分を見比べてみてください…いや、まったく同じやん!ってなるかと思います。実はこの2つのお薬の成分が同じであることには理由があります(少し難しい話になります)。
セチリジンの成分の右下に「及び鏡像異性体」と書いてあります。この鏡像異性体とは、成分を構成する立体構造が、実像と鏡像の関係にあるものをいいます。何かの物質を作り出す場合、セチリジンのように実像と鏡像の2種類が混ざった状態で作り出されることがしばしばあるため、このような「鏡像異性体」の混在するお薬が生まれます。
セチリジンは実像と鏡像の2種類の立体構造が存在するお薬ですが、レボセチリジンはより優れた効果を示す片方の立体構造だけを抽出したお薬になります。
レボセチリジンは、セチリジンを改良したお薬なので、セチリジンと比較して効果が高く、眠気の副作用が起こりにくいお薬になっています。一方で、セチリジン同様、腎臓の弱ってる方には使いにくいなどのデメリットは引き継いでいるお薬です。
ビラノア®(ビラスチン)
1錠中に「ビラスチン20mg」が含まれます。2021/11に日本で販売が認められた、比較的新しいお薬になります。このお薬の特徴は、「空腹時に服用すること」「効果が高く、眠気が起こりにくいお薬」です。空腹時に服用する理由としては、食事の影響を受けて、お薬の吸収が低下してしまうからです。そのため「寝る前に服用」とされる場合が多いです。
また、効果が高いお薬は、眠気も強くでる傾向がありましたが、こちらは眠気が起こりにくく、車の運転も可とされています。
【メリット】
・車の運転可とされている
・効果が強い
・眠気が出づらい
【デメリット】
・空腹時に服用となるため、お薬を飲むタイミングを工夫する必要がある
・先発品のみ発売中のため、比較的お薬代が高くなる可能性がある
タリオン®(ベポタスチン)
1錠中に「ベポタスチン5mgまたは10mg」を含有するお薬です。表の中では、効果・眠気のどちらも中間あたりに位置するお薬です。1日2回服用のお薬で、効果の持続時間は短いですが、即効性はあります。お薬の吸収が、食事に影響されないお薬という特徴を持ちます。
実は市販品もあるのですが、花粉症ではなく、鼻のアレルギーのみに効能が認められています。
【メリット】
・即効性がある
・食事の影響が少ないため、自分の好きなタイミングで飲むことができる
【デメリット】
・比較的眠気がでる→運転注意
・作用時間の短さゆえに1日2回服用となる
・腎臓の弱っている方は、眠気などの副作用が出やすい場合があり、お薬を開始するときは少量からとなる場合がある
デザレックス®(デスロラタジン)
1錠中に「デスロラタジン5mg」を含むお薬です。このお薬は、市販薬でご紹介した「クラリチン®(ロラタジン)」の改良版のお薬になります。
【メリット】
・眠気が出にくい
・車の運転可とされている
・作用時間が長いお薬なので1日1回の服用で良い(クラリチン®同様)
・デザレックス®(デスロラタジン)は、食事の影響を受けないため、1日1回好きなタイミングで服用できる(参考:クラリチン®(ロラタジン)は食後投与で効果が高くなる)
【デメリット】
・クラリチン®(ロラタジン)よりも効果は高まっているが、比較的マイルドなお薬
・先発品のみ発売中のため、比較的お薬代が高くなる可能性がある
*クラリチン®(ロラタジン)の場合
前のページでご説明したとおり、クラリチン®(ロラタジン)は「体内で成分が分解」してデザレックス®(デスロラタジン)に変化するという過程を踏まねばならず、分解がうまくいかず本来の効果が発揮されない場合がありました。この欠点を改善したのが「デザレックス®(デスロラタジン)」というお薬で、体内で分解の過程を経ることなく、しっかり効果を示します。
*デザレックス®(デスロラタジン)の場合
ちなみに、前述した「ルパフィン®(ルパタジン)」も分解されて、この「デザレックス®(デスロラタジン)」に変化します。
ルパフィン®(ルパタジン)の場合は、分解される前のルパフィン®(ルパタジン)そのものも抗ヒスタミン薬としての効果を発揮する点で、そのもの自体の薬効が弱いクラリチン®(ロラタジン)とは異なります)。
まとめ
今回は、花粉症に使われる「抗ヒスタミン薬」の飲み薬(病院で処方されるお薬編)について概要の説明と比較を行いました。病院でお薬を処方してもらうメリットとしては、日本で新しく承認されたお薬を試せるところにあると思います。これらの新薬は、抗ヒスタミン薬でいうと「眠気」の副作用が改善されていたり、「効果」がより強く発揮されるよう工夫されていたりと、改良の結果、従来のお薬と比較して良いお薬になっている一方で、新薬ゆえに副作用の報告件数が少なく、未知の副作用が潜んでいる可能性がゼロではないこともご留意いただいたければと思います。
また医師にお薬を処方してもらう際に、服用中の薬剤がある方は医師、薬剤師などに伝えていただくことで、相互作用のある薬剤を避けて、ご自身にあった薬剤選択をしていただくことができます。服用中のお薬がたくさんあって伝えるのが難しい場合は、お薬手帳を活用したり、服用中のお薬のスマホ写真などを提示していただいたりしても良いかもしれません。
こちらの記事を参考にしていただきつつ、自分に合うお薬を使っていただけると嬉しく思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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