便秘薬(下剤)の選び方について、3回に分けてご説明していきます。
- 便秘編ー①便秘の原因とお薬
- 便秘編ー②刺激性下剤と非刺激性下剤
- 便秘編ー③その他の病院で処方される便秘薬
便秘とは
①排便回数減少
②排便の困難さ
③硬便(かたい便)
④残便感(不完全な排便の感覚)
などを呈する状態を「便秘」といいます。
原因となる疾患がなくても、食事や排便習慣によって起こることがあります。
便秘というと排便回数が減少するイメージがありますが、毎日排便があったとしても、排便が困難だったり、残便感がある場合は「便秘である」といえます。
なぜ便秘になるの?
習慣性便秘(直腸性便秘)
自ら便を通行止めにして、便がたまっていき便秘に
【便の形状:大きくて非常に硬い】
何度も便意を我慢したり、下剤を乱用したりすることが原因で起こる便秘です。
便意を無視することで、どんどん大腸に便がたまっていきます。大腸は食物から水分を吸収する臓器なので、たまった便からも水分を吸収し続けて、硬い便になっていきます。
硬い便はいきんでも排便しづらく、さらに便秘が悪化してしまいます。
このタイプの便秘の方は、
①規則的な排便習慣を確立すること
②腸管を刺激する「刺激性下剤」を利用すること
などで、改善が見込まれます。
※アニメーションでは、まるい便が大腸から肛門まで移動していますが、実際の便は大腸の中をゆっくり移動するなかで水分が抜かれ、液→固形の便が形成されます。
弛緩性便秘
便の進みが遅く、つぎつぎと便が渋滞していき便秘に
【便の形状:硬くコロコロしている】
大腸の蠕動(ぜんどう)運動が鈍くなることで、大腸内に便が長くとどまります。その結果、便中の水分が吸収され続けて、硬い便となり、さらに便秘が悪化する悪循環に陥ります。
腹筋力の衰えている方も、排便のときに十分な腹圧をかけられないため、弛緩性便秘になりやすいです。
大腸の動きが鈍いため、便がどんどん渋滞していきます。このタイプの方は、食物繊維を摂取することで大腸を刺激し、大腸の運動を促進することができると考えられています。適度な運動も効果的です。
このタイプの便秘の方は、
①食物繊維の多い食事・適度な運動
②便を軟らかくする下剤「非刺激性下剤」を使うこと
で改善が見込まれます。①②で改善が見られない場合は、
③腸管を刺激する「刺激性下剤」
が用いられます。
ちなみに、女性で月経前に便秘(=PMS)になる方もいらっしゃいます。これは月経前に「黄体ホルモン」の分泌が増えることで、大腸の蠕動(ぜんどう)運動が鈍くなるために便秘になると考えられています。つまり、今回説明した「弛緩性便秘」と同じ過程を経て便秘になります。
よって上記の①②③の方法で、便秘の緩和や改善が期待できます。
けいれん性便秘
大腸を進む途中で事故発生、通りづらくなり便が滞留して便秘に
【便の形状:小さくコロコロしている】
副交感神経の亢進などにより、腸管が緊張状態となり、便の移送が妨げられることで起こります。大腸の蠕動(ぜんどう)運動そのものが低下する「弛緩性便秘」とは異なり、大腸の動きが不規則になってしまって起こるのが、この「けいれん性便秘」です。精神的なストレスが原因となることもあり、ときに抗不安薬などが有効な治療手段になります。
※過敏性腸症候群(IBS)と呼ばれることもあり、IBSは便秘や下痢を繰り返す症状がみられる場合があります。
このタイプの便秘の方は、
①便を軟らかくする下剤「非刺激性下剤」を服用する
②過敏性腸症候群治療薬などを服用する
③できるだけストレスをため込まない(抗不安薬・抗うつ薬を服用することも)
などで、改善が見込まれます。
③の抗不安薬などは、精神的ストレスがしばしばこの便秘の原因となることから、服用されることがあります。
注意していただきたいのが、このタイプの便秘に「刺激性下剤」を使うと、かえって症状が悪化するため、使えないことです。
過敏性腸症候群治療薬や抗不安薬などは、医師の診察を受けて、このタイプの便秘(もしくは下痢)と診断された場合に処方していただけます。
食事性便秘
少食、偏った食生活などが原因で起こります。意識的に食物繊維の多い食事や果物を摂取することで、改善が見込まれます。
まとめ
今回は便秘の原因と、それぞれの便秘のおおまかな治療方法について、簡単にご説明させていただきました。次回は、具体的なお薬を紹介し、特徴などから使い分けを考えていきたいと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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