「せき」と「たん」編
③鎮咳薬(せきどめ)の比較
中枢性鎮咳薬
中枢性鎮咳薬は「麻薬性」と「非麻薬性」に分類されています。
どちらも「咳中枢を抑制する」ことで鎮咳薬としての効果を発揮し、せきを止めます。
「麻薬性」と「非麻薬性」の違いは、依存性や副作用の強さです。一般的に「麻薬性」鎮咳薬の方が効果は強いと考えられています。
麻薬性鎮咳薬
鎮咳作用(せきどめの作用)は、モルヒネ⋙ジヒドロコデイン>コデイン の順で強いとされています。副作用や依存性の観点から、モルヒネは鎮咳薬としては用いられず、ジヒドロコデイン、コデインは用いられています。
副作用に関しては、コデインよりもジヒドロコデインの方が少ないです。
《副作用の例》
副作用の便秘に対しては、下剤を用いる場合もあります。下剤の選択については一般的に、便が固い場合は非刺激性下剤(便をやわらかくする下剤)を、大腸の動きが悪い場合は刺激性下剤が用いられます。
麻薬性鎮咳薬はぜんそく発作中には使えません。その理由としては、これらの麻薬性鎮咳薬は、気道の粘液分泌を抑制する作用を持つため、たんの粘り気を招き、さらに気管支の収縮を起こすためです。
非麻薬性鎮咳薬
参考文献:薬がみえる vol.3
治療薬マニュアル2022
()内の商標は、処方箋医薬品名で記載しています。
デキストロメトルファン(メジコン®)
一般的に非麻薬性鎮咳薬は、麻薬性鎮咳薬に効果が劣るとされていますが、デキストロメトルファンはコデイン(麻薬性鎮咳薬)とせき止め効果は同等で強いです。
ただし、眠気の副作用があるので、服用中は自動車の運転は不可となります。
またパーキンソン病治療薬「セレギリン(エフピー®)」とは飲み合わせが悪く併用できません(脳のセロトニン濃度を上昇させるため×)。
【メリット】
・効果がコデインと同等程度で強い
【デメリット】
・副作用に眠気があり、自動車の運転は不可
・パーキンソン病治療薬「セレギリン(エフピー®)」を内服している方には使えない
《市販薬》
・新コンタックせき止めダブル持続性 24カプセル [第2類医薬品]
・エスタック総合感冒
・エスエスブロン液L
などに含まれる成分です。
ペントキシベリン(トクレス®)
局所麻酔作用を有するため、咽頭の痛みや刺激を感じる方に使いやすいお薬です。
「抗コリン作用」といって、副交感神経を抑制する作用があり、その結果、気管支を広げるため呼吸を楽にします。一方で、副交感神経の抑制によって、眼圧を上昇させたり、消化管の運動が抑制されたりします。よって、緑内障の方には使えず、副作用として便秘などがあらわれたりします。
【メリット】
・局所麻酔作用を持つため、咽頭の痛みや刺激のある方に使いやすい
・気管支を広げて、呼吸を楽にする作用を持つ
【デメリット】
・緑内障には禁忌(使用できない)
・抗コリン作用による便秘、口の渇きなどの副作用がでる可能性がある
ジメモルファン(アストミン®)
大体の鎮咳薬が有する副作用としての「便秘」を示さないため、便秘が問題となる方に使用しやすいです。
糖尿病やその疑いのある方には、慎重に使用します。
【メリット】
・便秘の副作用がないため、便秘が問題となる方にも使いやすい
【デメリット】
・糖尿病やその疑いのある方には、慎重に使用する
ベンプロペリン(フラベリック®)
咳中枢に対する中枢性抑制のほかに、末梢性の作用(気管支拡張)で呼吸を楽にする作用を持つお薬です。効果はコデインより少し劣るか同等とされています。
比較的安全性は高いといわれていますが、音程障害(音が低く聞こえる)が生じることがあります。
【メリット】
・気管支を広げる作用で呼吸を楽にする
・効果がコデインと同等程度で強い
【デメリット】
・音程障害(音が低く聞こえる)が生じることがある
クロペラスチン(フスタゾール®)
気管支を広げる作用と、緩和な抗ヒスタミン作用をもつお薬です。
【メリット】
・気管支を広げる作用をもつ
・抗ヒスタミン作用をもつ
《抗ヒスタミン作用について》
ヒスタミンが知覚神経や血管に作用すると、アレルギー様の作用を示します。抗ヒスタミン作用をもつお薬(クロペラスチン(フスタゾール®)や抗ヒスタミン薬)は、ヒスタミンがこれらの器官に作用するのを防ぐため、アレルギー症状を抑えます。
ノスカピン(ノスカピン末)
即効性の鎮咳作用を示すため、この中で唯一気管支喘息に伴う咳に適応があります。
耐性や依存性もありません。
ノスカピン末の「末」とは、散薬(粉薬)という意味です。
【メリット】
・即効性の鎮咳作用を示す
・中枢性鎮咳薬の中で唯一気管支喘息に伴うせきに使用できる
・気管支拡張作用をもつ
【デメリット】
・散薬(粉薬)のみのため、お薬の剤形(錠剤、シロップなど)は選択できない
グアイフェネシン(フストジル注®)
注射で使われる薬剤です。気管支を広げて呼吸を楽にする作用と、去痰(たんきり)作用をもちます。皮下注射・筋肉注射で用いられます。
チペピジン(アスベリン®)
気管支を広げて呼吸を楽にする作用と、去痰(たんきり)作用をもつお薬です(グアイフェネシンと同様)。お薬が尿から排泄されることから、赤味がかった着色尿になるときがあります。
【メリット】
・気管支を広げて呼吸を楽にする作用をもつ
・去痰(たんきり)作用をもつ
【デメリット】
・尿が赤色に着色することがある(お薬が尿中に排泄されるため着色、害はないが驚かないよう留意する)
エプラジノン(レスプレン®)
鎮咳(せきどめ)作用はコデイン(麻薬性鎮咳薬)に匹敵する強さを持つとされます。
気管支を広げて呼吸を楽にする作用と、去痰(たんきり)作用をもつお薬です(グアイフェネシンと同様)。
【メリット】
・鎮咳(せきどめ)作用はコデイン(麻薬性鎮咳薬)に匹敵する強さ
・気管支を広げて呼吸を楽にする作用をもつ
・去痰(たんきり)作用をもつ
まとめ
今回は中枢性鎮咳薬について比較していきました。
眠気や便秘などの副作用を示す薬剤が多いため、お薬を選ぶときはご自身に合ったお薬を選べれば良いですね。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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