便秘薬(下剤)の選び方について、3回に分けてご説明していきます。
- 便秘編ー①便秘の原因とお薬
- 便秘編ー②刺激性下剤と非刺激性下剤
- 便秘編ー③その他の病院で処方される便秘薬
便秘の治療
便秘の原因となる病気(甲状腺機能低下症など)がある場合は、その病気の治療を行います。便秘の原因となるお薬を服用されている場合は、可能であれば変更・中止します。
明らかな原因疾患がない場合は、まずは生活習慣や食生活の改善を行います。
《生活習慣、食生活の改善》
・水分摂取量を増やす(心臓や腎臓の治療をされてる方は、医師と相談してください)
・運動量を増やす
・食物繊維を増やす
それでも便秘が続く場合は、下剤を用います。
下剤の種類
①刺激性下剤
②非刺激性下剤(機械性下剤)
③その他
に分類してご紹介します。
刺激性下剤
大腸(もしくは小腸)を刺激して、腸管のぜん動運動を亢進させて便秘を改善するお薬です。腸管を刺激して動かすため、腹痛が出やすいですが、効果も出やすいため、使用頻度は高いお薬です。
習慣性便秘(便意をたびたび我慢することで起こる便秘)、弛緩性便秘(大腸の動きが悪いことで起こる便秘)に用いられます。
薬物名:
《大腸刺激性下剤》
センナ、センノシド、アロエ、大黄(ダイオウ)
ピコスルファートナトリウム、ビサコジル など
《小腸刺激性下剤》
ヒマシ油 など
大腸刺激性下剤は、効果が出やすいため使用頻度が高く、長期乱用される傾向があります。しかし、長期間使い続けると、耐性を生じやすく効果があらわれにくくなるため、毎日使うのではなく、「とんぷく」として便秘の症状があるときのみ使用するのが望ましいお薬です。
大腸刺激性下剤は、お薬を飲んでから効果があらわれるまでに、約7~12時間かかります。そのため、寝る前にお薬を服用して、朝の排便を促す、という使い方をされることが多いです。また飲んだお薬の量に対する効果は、個人差があります。
基本的に妊婦さんへの使用が難しいタイプのお薬ですが、比較的効果の穏やかな「ピコスルファートナトリウム」は使用されることがあります。「ピコスルファートナトリウム」は、その効果の穏やかさから、けいれん性便秘(腸管がけいれんし、うまく便を輸送できず起こる便秘)にも使用できます。
非刺激性下剤
非刺激性下剤は主に便をやわらかくして排泄しやすくするお薬になります。便をやわらかくする方法の違いに分けて3タイプに分類されます。
塩類下剤
薬物名:酸化マグネシウム(MgO)
酸化マグネシウムは、腸管で難吸収性(重炭酸塩・炭酸塩)にかわり、腸管内の浸透圧を上げることで、腸管壁から腸管内へ水分を引き込みます。腸管内の水分が増加した結果、便はやわらかくなり、便の排泄を促します。
酸化マグネシウムの必要量は個人差が大きいため、最初は少量から服用を開始し、排便状況に応じて飲む量を調整していきます。
弛緩性便秘(大腸の動きが悪いことで起こる便秘)やけいれん性便秘(腸管がけいれんし、うまく便を輸送できず起こる便秘)に使用されます。
酸化マグネシウムは、副作用や耐性が生じにくく、妊婦さんにも使用できるお薬です。
しかしながら、腎臓の機能が低下している方や高齢者、高マグネシウム血症の方には、酸化マグネシウムの服用で、体内のマグネシウム濃度が上昇しやすいため慎重に使っていただく必要があります。
また一部の抗菌薬や骨粗しょう症のお薬と相互作用を示すため、普段内服しているお薬がある方は、酸化マグネシウムの内服を始める前に、医師や薬剤師にご相談ください。
弛緩性便秘の方は、酸化マグネシウムを飲み始めて2,3日たっても排便がない場合に、刺激性下剤(前述)などを「とんぷく」として便秘の症状があらわれたときのみ服用していきます。
浸潤性下剤
薬物名:ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)
こちらも低刺激性の下剤に分類されており、界面活性作用で便の表面張力を低下させることで、便に水分を浸透させてやわらかくするお薬です。酸化マグネシウムと同様、便がやわらかくなるため排泄しやすくなります。
比較的作用が弱いお薬のため、ほとんどの場合、刺激性下剤などと一緒に配合されています。
例:コーラックⅡ® → DSS(浸潤性下剤)+ビサコジル(刺激性下剤)
オイルデル® → DSS(浸潤性下剤)+麻子仁末(後述)
便がやわらかくなることで、大腸の中で便がすべりやすくなります。
その効果の弱さゆえに、重度の便秘に単剤で用いられることはほとんどありません。
膨張性下剤
薬物名:カルメロースナトリウム
腸管内で水分を吸収し、お薬(カルメロースナトリウム)が膨張することで、ゼラチン状の塊となり腸管を刺激します。その刺激を受けて、腸管の運動は促され、便の流れを改善します。
カルメロースナトリウムは、膨らんでゼラチン状の塊となり、大腸を刺激するという作用の仕方から、副作用として「おなかの張り」や「吐き気」が出ることがあります。このような副作用に気づいた場合は、ほかの下剤に変更、もしくは医師・薬剤師にご相談してください。
まとめ
今回は①刺激性下剤、②非刺激性下剤についてご説明しました。
市販の下剤は、①②単剤もしくは①+②の成分を組み合わせたお薬として販売されています。①刺激性下剤で腹痛に悩まされている方には、②非刺激性下剤を試してみたり、①刺激性下剤の効果が出るまで10時間前後かかるため、内服のタイミングを変えてみるなど工夫されてもよいかもしれません。
次回は、③その他として、一般に市販されておらず、病院で医師から処方された場合に使用できる下剤である、
「ルビプロストン(アミティーザ®)」
「リナクロチド(リンゼス®)」
「エロビキシバット(グーフィス®)」
についてご説明します。
これらは、どれも比較的新しいお薬になりますが、慢性便秘などで医療機関を受診された場合に、医師から処方される場合があります。
お薬の作用のしかたが面白いので、よろしければあわせてご覧ください。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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